Tom Harrell / TRIP

2014/09/14


Tom Harrellはほぼ毎年アルバムをリリースしていて、ジャズアーティストの中でもかなり多作の部類に入ると思っていますが、今年も新作を届けてくれました。

「Light on」('07) 「Prana Dance」('09) 「Roman Night」('10) 「The Time of The Sun」('11) 「Number Five」('12) まではほぼ固定したバンド < Ugonna Okegwo(b) ・Johnathan Blake(ds)・Wayne Escoffery(ts)・Danny Grissett(p) > でしたが、前作「Colors of A Dream」('13)でピアノレスとなり、この作品ではバンドから残っているのはUgonna Okegwoのみとなっています。彼のサイトでも別プロジェクトとして捉えているようなので、新たな試みがスタートしたと解釈すればよさそうです。まあ「Number Five」とかマンネリを避けようとしていた感が否めない作品があったので、一区切りつけたかったのでしょうか。Johnathan Blakeがいるあのバンドが凄く好きだったので、復活してくれるといいんですが。

ライナーをみていると、制作したきっかけはトランペットのイベント出演で、グループの中でのトランペットの表現をつきつめたくなったというようなことが書かれています。(訳あってるかな?)テーマは、スペイン黄金の世紀の後半(17世紀)の小説ドン・キホーテ(Don Quixote)の登場キャラクターの”旅”。

このころの"旅"のリズムなのか、作品の冒頭 Sunday (#1) はやけに剽軽というかのんびりしたリズムでスタート。Okegwoのベースがこれまでになくフィーチャーされていて意外な感じ。ベースの音が大きいです。

続く Cycle (#2)は一転して性急なリズムの4ビート。この演奏は凄くスタンダードな展開ですが、Harrellのやわらかな音色と、クールというか温度感低めな表現のMark Turnerの相性がすこぶるいい塩梅で、ユニゾンのところなどはまさに融合している感じ。

それは3曲目から8曲目までのドン・キホーテ組曲で通じて発揮されていて、硬質でホットなWayne Escofferyとの持ち味の違いが楽しめます。ただ組曲通してまったりとした曲調が続いていて、音色の心地よさと相まって眠気を誘う危険があります。

9曲目からはちょっと現世に戻って、HarrellとTurnerの味わいのあるソロが堪能できるバラード。Turnerのサックスってこんなに暖かかったかしら?、と意外な印象をもちました対Harrell仕様にしたのかも。10曲目はややリズムに乗った4ビートでAdam Cruzのソロが用意されています。Johnathan Blakeと比べるとリズムのキレとかバリエーションは少なくて、もっとオーソドックスな叩き方。彼のリーダー作もそうですが、モーダルでスローなテンポで持ち味の出るタイプなんでしょうね。

ラストの2曲も含めて、Tom HarrellやMark Turnerのフレーズや音色をじっくり味わえる作品ではあるものの、曲のリズムがだいたい似たようなスロー~ミドルなものが大半で、まったり感がどうしても先にきてしまいました。このバンドは似た指向性をもっているメンバーが揃いすぎているようなので、ひとりだけでも尖ったメンバーがいたら違ったインパクトになったかもしれません。


"We"  -ドラムスがAdam CruzとなっているTom Harrell Quintet
 Tom Harrell + Ugonna Okegwo + Adam Cruz + Wayne Escoffery + Danny Grissett





Personnel
Tom Harrell : trumpet, flughelhorn
Mark Turner : tenor sax
Ugonna Okegwo : bass
Adam Cruz : drums

Tracks
1. Sunday
2. Cycle

 The Adventures of A Quixotic Character
3. The Ingenious Gentleman
4. The Duke and the Duchess
5. Enchanted
6. Sancho and Rocinante
7. The Princess
8. Windmills

9. Coming Home
10. Coastline
11. After the Game is Over
12. There

Rel : 2014 HighNote Records HCD7261
Recorded at Water Music, Hoboken, NJ on October 24, 2014 (多分タイプミス)

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